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2024年1月3日水曜日

2024年の始まりにあたって

あけましておめでとうございます。
新しい年の皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

令和能登半島大地震の被害にあわれた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
以前FANTANIMA!に出品された、とくいあやさんと本多厚二さんは金沢市郊外の海の近くにお住まいですが、地震のあとすぐに連絡をとり無事を確認いたしました。

不思議可愛い作品を楽しむだけのFANTANIMA!ですが、10年あまりのあいだに世界情勢に巻き込まれるようになってしまいました。

ウクライナの作家の安否はいつも気になりますが、そのなかでもロシアによるレハンスクへの侵攻後レムール・ロリさんと連絡がとれなくなり、 誰もが心配していました。

それが昨年のクリスマス・イブの日、インスタグラムに彼女の投稿が現れました!
だれもが驚き嬉しかったのですが、その画像に息を飲まずにおれませんでした。

一年以上の沈黙の後、汚れて爪の伸びた手が結ぶハートのサイン…

不安定なネット環境でたくさんの人が彼女と連絡をとったと思います。私も彼女自身の安否とこの手のことを知りたくて、ダメ元で連絡をとったところ返事がきたのです。クリスマスの奇跡のようでした。

これは山羊の手だそうです。

具合の悪いお母さんを置いて移動することはできないので、今も同じ家にとどまっているそうです。創作をしていないとおかしくなりそうなので、ありあわせの材料を工夫しながら制作を続けているそうです。
この山羊の手はペーパーマッシュで制作。彩色のための油絵の具を得るのは困難なので、中世の画家のように自分で顔料を挽いて油を混ぜて絵の具を作っているそうです。今までいろいろな制作をしていたので技法の蓄積があるので、なんとかやっていけるとのことです。

彼女のことやこの作品について、日本の人たちに知らせたいと伝えたら、「喜んで」とのことでした。
ただ、FANTANIMA!に対してウクライナの作家たちは昨年の「imagine」のテーマでロシアの作家と展示されるのは受け入れられないと拒否を表明した経緯があります。それがウクライナの作家の自然な感情であることは理解できます。ですから、彼女も同様に感じるのではないかという私の危惧を伝えました。

するとインターネットが1年以上ぶりにつながったばかりの彼女は、既にこの話を友人の作家から聞いていて「とても悲しいことだ」とコメントしました。

「創作に関わる人間はもっと寛容でなければなりません。私たちは作品を通して愛や受容という人間に備わった事実だけについて語るべきです。残念ながら多くの作家たちが見栄えの良い仮面ばかり気にするようになってしまったのは悲しいこと。自分が今できることは、このクレイジーな世界で自制心を保つ人間で連帯すること。悲しまないで。わたしたちは耐えなければ。」
不当に自由を奪われている彼女を励ますつもりが、私が励まされてしまいました。彼女の強さも奇跡だと思いました。

長いあいだ沈黙を保っていたタチアナ・スリズさんにこのことを伝えたら、彼女も同感だとのこと。
今は戦時下で抗がん剤の治療中だから約束はできないけど、今は戦争から頭を切り離して作品を作っていて、それができればFANTANIMA!に送りたいと言ってくれました。平和のために一緒に力を合わせましょう!と書いてくれました。

レムール・ロリさんは作品を送ることはできませんが、画像を送り、言葉を交わすことができるようになりました。
その状態がいつまで続くかわかりません。新しい年も、日本でも大変なことが続いています。

でも日本は「平和の居場所」でありつづけています。
この場所を作家たちが安心して帰ってこられるようなhomeとして、守っていければと思っています。

今年のFANTANIMA!のテーマはhome。どうぞよろしくお願いいたします。